今さら聞けない!自己破産の「免責」とは?
自己破産を検討している人の中にも「免責」について、実はよく分かっていない、という人もいるでしょう。免責は知っているという人でも、どんな時に免責が許可されるのか、また、免責されない債務にはどんなものがあるのかまでは把握していないことが多いようです。
今回は「免責」がどのような手続きなのか詳しく解説していきたいと思います。
そもそも免責って何?
免責とは、自己破産の手続きを行って裁判所に認められれば、借金がゼロになる制度のことです。よって、免責が認められれば、それ以降は借金を返済する必要がなくなります。借金が免責されるのは、債務整理の中でも自己破産だけです。
借金を免責してもらい、法的とは言え借金をゼロにすることは「踏み倒すのと同じだ!」と非難する人がたまにいるようです。
しかし、やむを得ない事情で借金を背負ってしまい、借金苦から自ら命を断ってしまったり、犯罪に走ってしまったりする人が少なからずいます。このような人を助けるために、免責という制度が存在しています。免責をしてもらう人はギャンブルや浪費など自分勝手に借金を作った人ばかりではありません。
ちなみに、本来は破産手続きと免責手続きは別ものですが、一般的に「破産=免責」と認識されています。
免責の手続きにも申立てが必要?
先ほども書いたように、破産手続きと免責手続きは別の手続きです。そのため、破産手続開始の申立てとは別に、免責許可の申立ての手続きもしなければならないと思われるかもしれません。以前はそうでした。
しかし、破産手続後に免責許可の申立てを忘れる人が多く、問題となっていました。そこで、破産法が改正され、「破産手続開始の申立てをした場合は免責許可の申立てもしたものとみなす」となっているので、現在では破産手続開始の申立てを提出するだけで良くなりました。
東京地方裁判所に備え付けの申立ての用紙では、破産手続開始と免責許可の申立書が一体となっているようです。
自己破産しても免責されないことがある
裁判所に自己破産を申立てたからと言って、絶対に借金がゼロになるわけではありません。基本的に免責はやむを得ず借金を背負ってしまい苦しんでいる人を助けるための制度ですので、裁判所が助ける必要がないと判断すれば、免責は認められません。
免責不許可事由とは?
免責が認められないのは「免責不許可事由」に該当した場合です。免責不許可事由とは簡単に説明すると、免責が許可できない理由のことですね。
免責不許可事由は破産法525条1項の「免責許可の決定の要件等」で定められています。
■破産法252条|電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
破産法の原文を読んでもよく分かりませんので、主な内容を解説しておきます。
基本的に自己破産を依頼している弁護士の指示やアドバイス通りに行動しておけば、特に免責不許可事由に引っかかるようなことはないでしょう。
ひっかかるとすれば、借金理由に関してです。返済できなくなるまで借金をしてしまった理由が、競馬やパチンコ、パチスロなどのギャンブルだった場合や、収入に見合わないような買い物で浪費した場合、また、FXや投資によって一発逆転を狙って借金を増やしてしまった場合には、免責不許可事由となり、免責が許可されない可能性があります。
免責不許可事由に該当したからと言って、免責が許可されないわけではありません。免責不許可事由に該当したとしても、裁判所は破産者の事情や反省の度合いなどを考慮して、免責を許可することがあります。これを「裁量免責」と言います。
そのため、借金をした理由が例えギャンブルであっても、免責を許可してもらえる可能性は十分にありますので、諦めずにまずは弁護士に相談してください。
もし免責できなかったら?
免責不許可となってしまうと、借金はそのまま残ります。しかも、破産者としての身分も復権することができません。
自己破産の「復権」とは・・・
自己破産では手続きをすると、破産者という扱いになり、特定の職業に就けないなど資格の制限があります。この制限は免責が許可されれば、解除され元にもどります。これを「復権」と言います。
免責が許可されなかった場合は、不許可の決定から2週間以内に高等裁判所に申立てを行う(即時抗告)ことで、再審してもらえます。とは言っても、免責不許可事由が明らかにある場合は即時抗告でも免責は難しいようです。
即時抗告でもダメな場合は、任意整理で借金を整理することになります。交渉が上手くいき、借金がなくなれば、復権できる可能性があります。
ちなみに、破産手続開始の決定から10年が経過すれば、破産者は復権することができます。
免責されてもなくならない債権がある?
基本的に裁判所から免責が許可されると、借金はゼロになり、返済する義務はなくなります。しかし、これまで滞納したきた全ての支払いが免除されるわけではありません。
中には免除されないものもあります。これを「非免責債権」と言います。非免責債権に該当するものは免責を受けた後も支払う義務が残りますので、注意が必要です。
非免責債権には、住民税などの税金、犯罪行為によって生じた損害賠償金、悪意や重過失による人身事故の損害賠償金、養育費、故意に債権者名簿に記載しなかった借金(故意でなければ免責)、罰金などが該当します。