自己破産の「審尋」とはどんなもの?
自己破産をお考えの方は裁判所の審尋を受ける必要があることをご存知でしょうか。あまり聞きなれない言葉ですから「何それ?」とお思いになったことでしょう。
自己破産する際に財産があってもなくても審尋は必ず行うものですので、いつ、どんな状況で、どんな質問がされるのかなど知っておく必要があります。
審尋には2種類ありますが、まずは審尋の概要から解説していきます。
審尋とは?
「審尋」とは事情を尋ねるという意味ですが、つまりは裁判所があなたに事情聴取するということですね。
自己破産をする場合は多くは弁護士などに手続きを依頼することになると思いますが、自己破産を認めてくれる決定権者は裁判所です。
正確には裁判所の裁判官が許可するかどうかを決めることになりますが、今一度自己破産という制度を考えてみると、自己破産をする方は全ての借金を棒引きしてもらえますが、お金を貸した債権者は大きな損害を被るものです。
債務者に人生をやり直させるための最終手段といえるものですが、他人を大きく害するわけですから誰にでも簡単に認めるわけにはいきません。裁判所は「この債務者は本当に借金を棒引きにしてやるだけの価値がある者なのか?」ということをよくよく考えて決定する必要があります。
そこで自己破産をする債務者本人から、決定権者である裁判官が直接事情を聴くという手続きを踏む必要があり、これを「審尋」というのです。
審尋には二つあり、破産手続きの開始を決定するために行う「破産審尋」と、借金を棒引きにする免責を許可するための「免責審尋」があります。
それでは両者はどのようなものなのかそれぞれ見ていきましょう。
破産審尋とは?
自己破産の手続きは大きく二段階あり、第一段階は自己破産の手続き自体を開始するための「破産手続開始決定」です。この決定がなされると債務者は「破産者」としての地位をえることになります。
破産者になったとしてもそれで借金が棒引きされるわけではなく、後に説明する免責許可決定を受けなければ借金は残ったままです。
破産審尋で質問される内容
破産手続き開始決定をするために行われる破産審尋では、債務者が「どうして借金を膨らませてしまったのか」、そして「その弁済がなぜ不可能になってしまったのか」などを尋ねられます。
弁済不可能な状態でなければ自己破産は認められませんから、現在の借金はいくらあり、残っている財産はどのくらいなのか、また事前に書面で提出してある債権者一覧に載っている者以外からの借入はないかなどを聞かれます。
通常、自己破産の手続きでは弁護士が事前に裁判所に説明書類を提出していますが、その中に債権者一覧表があります。それらの債権者以外からの借入はないかを聞かれるわけです。
債務者がどのような経緯で自己破産を利用するに至ったのかという経緯や事情は債務者ごとに詳細が異なるので、実際に何を聞かれるかは債務者ごとに異なります。少し突っ込んだ質問も出るかもしれませんが、事前に提出した説明書類と相違のない説明ができるようにしておいてください。
しっかりと準備しておく
破産審尋は他の自己破産申請者と一緒にすることはなく、個人ごとに行われます。
所用時間は大体10分から15分くらいと意外と短いです。しかし、かなり緊張すると思いますので、担当の弁護士と事前にシミュレーションするなどして準備しておくと良いでしょう。
破産審尋が終わり、破産開始決定がなされると後日破産開始決定をした旨を記した書類が郵送されてきます。破産開始決定がされると債務者は破産者となり、その旨が官報に掲載されます。また別途次の審尋を行うための日程を記した書面も郵送されてきます。
免責審尋とは?
破産審尋が終わり、無事に破産手続き開始決定がなされると、次に免責許可決定をするための「免責審尋」が待っています。
こちらは破産審尋と違って複数の自己破産申請者と一緒に集団で行われます。破産審尋は個人的な事情を突っ込んで質問されますが、免責審尋はそういうことはありません。
免責審尋で質問される内容
冒頭で述べたように自己破産は債権者を大きく害するため、免責を認める者は「誠実な者」でなければなりません。
それを見るためのものが免責審尋で、債務者が嘘をついていないか、ギャンブルや浪費など情状の余地が薄い事情によって作られた借金が大きくないかなどを確認するのが本来の目的ですが、実際の審尋は突っ込んだ質問などはほとんどされません。
裁判所によって実際の免責審尋の進め方は若干異なりますが、その進行手続きはまず生年月日の他、氏名や住所に変更が無いかどうかを聞かれます。
次に自己破産で免責された後はその後7年間は新たな借金ができないこと、また安易に借金をしたり保証人にならないようになどの注意事項の説明を受けます。
ほとんどの場合この程度で免責審尋は終了です。所要時間は10分程度です。以外にあっさりしたものです。破産審尋と違って手続きは形式的といって良いでしょう。
ただし、裁判所によっては一人ずつに個別に質問がされることがあります。あるいはその債務者が抱える事情によっては個別的な注意事項の説明を受けることもあるかもしれません。
免責審尋が終わり、無事に免責許可決定がなされると、後日書類が郵送されてきます。
それが免責許可決定書で、あなたの借金が棒引きにされたことを証明するものですから大切に保管して下さいね。