任意整理で債権者と和解できないケースとは?
【質問】
これまで数年続けてきた借金の返済が難しくなってきたため、任意整理をしたいのですが、貸金業者を和解できないことはあるのでしょうか?和解できないのであれば、自己破産しかないのでしょうか?
【回答】和解できないこともあるが、自己破産以外の道も
これまで数年続けてきた借金の返済が難しくなってきたため、任意整理をしたいとのこと。
もしこれができないようなことがあればどうなってしまうのか不安だということですね。
任意整理ができないケースは確かに存在します。
しかしその場合でもいきなり自己破産に進むのではなく、その前に検討するべき手段がいくつかあります。できればあなたの生活に支障が少ない手段を選びたいところですね。
それでは任意整理ができないのはどういう時か、またその時に選択できる他の手段はどういうものがあるのか見ていきましょう。
任意整理に応じるかどうかは債権者の自由
「任意」の言葉の通り、債務者であるあなたからの任意整理の要請に応じるかどうかは業者側が自由に決められるという大原則を覚えてきましょう。
実際はこの要請に応じる業者が大半なのですが、どうして業者が自分方に不利な要請に応じるのかお分かりですか?
もし要請に応じず、債務者が自己破産や個人再生などの手続きを実行してしまうと、自分達の債権(貸した金)の回収が困難になるからです。大幅に債権が圧縮されたり、最悪債権全額が回収不能になるくらいなら、将来利息のカットなどの涙を飲んで任意整理に応じた方が良い、ということですね。
しかし業者が任意整理に応じないケースも多々あります。それはどういう場合でしょうか。
業者が任意整理に応じないのはどういう場合か?
あまり多くはありませんが、利息カット要求や交渉に応じない業者も存在します。これはもう、その会社の企業方針として「一切の妥協に応じない」という頑とした社是のよなものですからどうしようもありません。その代り自己破産などに移行した場合は貸金の回収不能分も甘んじて受けるというスタンスです。
また債務者側がいまだ返済をしていないか、若しくは取引から間もない場合は業者としては貸した意味が無いですからこれも任意整理に応じることは少ないでしょう。利息の回収によって利益を出すのが貸金業ですから、そのビジネスモデルを破壊するような要請には応じられないわけです。
またこれは貸金業者としてのプライドか、厳しい要求をしてくる特定の弁護士事務所や司法書士事務所の要請にのみ応じないということもまれに見られます。裁判など厳しい要求をされた腹いせに、特定の事務所からの要請を一切受け付けないことによって、その事務所が集客を難しくするようにするためです。
この場合債務者としては任意整理に成功している別の事務所を探すしかありません。
任意整理を断られたら!?
どのようにしても業者側が任意整理に応じない場合は仕方ありませんから、債務者であるあなたの側で次の手を考える必要があります。
最終手段である自己破産は、債務が収入を大きく上回っており、もはや立ち直りの余地が無い、すでに支払い不能に陥っている場合に認められるものですが、ほとんどの資産を手放さなければならないなどデメリットも大きくなります。
交渉や一定債務の圧縮で返済が可能で立ち直れる余地がある場合は次のような他の手段を選択することができます。
特定調停
債権者との交渉に簡易裁判所に間に入ってもらうもので、任意整理と同じように利息制限法による引き直し計算や将来利息カットの交渉ができます。
ただしこれも任意整理と同じく、あくまでも完済が見込まれなければなりませんので、業者側が譲歩してもなお返済の見込みが立たないような場合は選択できません。概ね3年以内に返済が見込まれる必要があります。
特定調停も業者側に応じる義務は無いので応じない業者もいるかもしれません。
一旦調停が成立すると確定判決と同様の効果があるので、もし、計画通りに返済ができなくなると財産の差し押さえがすぐにされてしまうデメリットがあります。
個人再生
次に検討することになるのが個人再生手続きです。
利息制限法による引き直し計算や将来利息カット程度では返済は難しいが、一定額の債務を免除してやればなお立ち直りの余地があるという場合に取られる選択肢です。綿密な再生計画を立てて裁判所に認めてもらわなければならず、弁護士等専門家の助力が必要になります。
大幅な債務の減額がなされるので、債権者の権利を大きく侵害する強力な手段です。そのため債務者が本当に立ち直りを強く希望し、それを実現するための詳細・綿密な計画を練る必要があります。
債務の減額値は借金の額によって異なりますが、基本的には借金が5分の1にまで圧縮されます。
条件としては給与所得者の場合、借金の総額(住宅ローンを除く)が5000万円以下であること、将来にわたり継続的に収入を得る見込みがあること、その金額が安定していることが最低条件となります。基本的には3年間、最長5年以内で債務を完済できる状況になければなりません。
厳格な手続きとなりますので個人の力だけで手続きを進めるのは実質的に難しく、希望する場合は債務整理を得意とする専門家に相談する必要があるでしょう。
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