最適な債務整理の選び方とは?
借金を整理したい場合、任意整理にするのか、個人再生するのか、それとも自己破産するのかを弁護士と相談して決めます。では、弁護士や司法書はどのようにして、最適な債務整理の方針を決めているのでしょうか?
この事を知っておくことで、相談する前にどのような方針が自分に合っているかが事前に判断できます。例え自己破産しか方法がないと言われたとしても、ある程度自分で分かっていれば、受け止め方も変わってくるでしょう。
以前書いた「知っておくと安心!任意整理の相談では何を聞かれるのか?」では、相談に行った際に聞かれることをまとめており、今回の記事は、この続きのような内容ですので、コチラの記事も合せて読むと分かりやすいかと思います。
相談者がどのくらい借金を抱えていて、どのくらいの支払い能力があるのか分かったら、弁護士や司法書士は以下のようなポイントによって、最適な債務整理を選択します。
「任意整理」を選択するケース
任意整理とは、弁護士や司法書士が債務者の支払い能力で返済できるような計画を貸金業者に提示して和解交渉をするものです。
任意整理の概要はコチラの記事をご覧ください。
・任意整理とは?知っておきたい任意整理の特徴
弁護士や司法書士が任意整理を選択するポイントは以下の通りです。
選択するポイント
- 任意整理でどのくらい借金が減額するか
- 3年以内に借金を完済できるか
- 毎月の支払い可能額は?
- 一括返済は可能か
- そもそも返済する意志はあるのか
任意整理でどのくらい借金が減額するか
まず最初にポイントとなるのは、「任意整理でどのくらい借金が減額されるのか?」という点です。グレーゾーンでの借金期間が長い場合は、利息制限法に基づいて引き直し計算を行えば、大幅に借金が減額される可能性があります。
しかし、出資法の改正で2007年頃からグレーゾーンで金利を取る業者が激減し、これに伴い、引き直し計算をしても借金の元本があまり減らないようになってきています。なので、この場合は今後取られる将来利息と遅延損害金の分だけが借金から減ります。
3年以内に借金を完済できるか
引き直し計算を行って残りの借金がどのくらいになるかが分かったら、次はその借金を3年で返せるのかどうかを検討します。
なぜ返済期間の基準を3年にしているかと言うと、3年より長い返済期間で貸金業者に交渉しても和解が難しいことがあるからです。返済期間が4年、5年となると、債務者が病気や解雇など予測できないような状況に陥る可能性が高くなってしまうため、貸金業者は和解を渋るようです。
しかし、債務者がこれまで1度も返済に遅れたことがないような優良な人ならば、最長5年までなら和解できる可能性がありますので、これらも加味しながら任意整理できるか検討します。
支払い可能額は?一括返済できるか
3年で返済する場合、引き直し計算で確定した借金を36回で割った金額が毎月の返済額となります。債務者の収入や支出を考慮して、返済していくことが可能かどうか判断します。
前述した通り、返済期間は最長でも5年なので、60回で分割しても返済が難しいとなると、現実的に任意整理は無理だと言えます。
また、親族などからお金を借りて一括返済できるのであれば、もちろん任意整理は可能です。一括返済だと貸金業者はさらなる元本の減額に同意する可能性があります。
しかしながら、親族にお金を借りて一括返済してしまうと、返済に苦労していない分、債務者の反省が足りないことがあります。反省していないと、また借金を繰り返す可能性もあるので、個人的にはおすすめしません。
そもそも返済する意志はあるのか
かなり初歩的なことですが、3年程度は返済を続けていく任意整理においてはとても重要です。
完済したいという意志が弱ければ、途中で返済が止まることもあります。返済が滞れば、貸金業者から残りの借金を一括で支払うように請求がきます。最悪の場合は自己破産するしかない場合もあります。
逆に意志が強いからと言って、かつかつの返済計画を立てても完済は難しいため、返済資金と返済意志の両方を考慮しながら、任意整理が最適かどうか弁護士は検討します。
「個人再生」を選択するケース
個人再生とは裁判所の手続きを利用して、借金を減額する手続きのことで、任意整理と同じように借金が無くなるわけではないので、残った借金は返済していきます。
任意整理は難しいが、ある程度収入がある人は個人再生を選択することになります。
個人再生の概要はコチラの記事をご覧ください。
・任意整理と個人再生を比較!その違いとは?
選択するポイント
- 安定した収入がある
- 借金が5000万円以下
- 住宅を残したい
任意整理と個人再生は手続き後も残った借金を返済していくという意味では同じですが、借金の減額の幅が大きく違います。個人再生では借金の金額によって異なりますが、借金が500万円を超え1500万円以下だと5分の1にまで小さくなります。
任意整理に比べて大幅に借金が減額される個人再生ですが、裁判所に申し立てるには、借金が5000万円以下であることと、将来において継続的収入がの見込みがなければなりません。ここが主な選択ポイントでしょう。
また、どうしてもローンが残っているマイホームを残したいと言う場合は、上の要件を満たしているのであれば、自己破産ではなく個人再生を選択します。
「自己破産」を選択するケース
自己破産とは、裁判所を利用して、借金をゼロにする手続きのことです。任意整理で借金を返済するのが無理だと判断され、住宅などを確保しておきたいという事情がなければ、自己破産を選択することになります。
自己破産の概要はコチラの記事をご覧ください。
・任意整理と自己破産を比較!その違いとは?
選択するポイント
- 任意整理での支払いが不可能
- 資格を喪失しないか
- 自宅を持っているか
- 免責不許可事由があるかどうか
任意整理での借金返済が不可能だと分かったら、次に考えられるのは、個人再生か自己破産となります。自己破産によって制限される職業でもなく、自宅などの守りたい財産がないのであれば、借金が免責、つまりゼロになる自己破産を選択する方が賢明だと言えます。
自己破産では、ギャンブルや浪費で作った借金は免責されません。この免責されない理由を「免責不許可事由」と言います。これがあると、借金はゼロにならないので自己破産する意味は全くありません。
しかしながら、裁量免責というものがあり、債務者に反省の色が見られる場合は免責不許可事由があっても免責が認められる場合もあります。そのため、弁護士は裁量免責が得られるかどうかも考慮しながら検討します。
まとめ
今回説明してきたようなことを考慮しながら、弁護士は最適な借金整理の方法を選択します。
もちろん、一方的に決めることはなく、債務者の意向も聞きながら方針を決めて行きます。明らかに自己破産しか道はないのに、任意整理を強く希望し固執すると、弁護士に受任してもらえない場合もあるので、弁護士のアドバイスをしっかりと聞くように注意しましょう。
カテゴリ:任意整理の基礎知識